結局俺が働いている
気がつくと、社長の机の上にすべての案件が集まっている。
見積の確認、クレーム対応、契約判断、例外処理。
担当者が処理できるはずの仕事まで、最終的に社長へ回ってくる。
社員が頼りないからでしょうか。
人手が足りないからでしょうか。
違います。
実はこれは、会社の規模や人材の質の問題ではなく、
組織の設計によって必然的に起きている現象です。
社長が忙しいのではありません。
社長しか判断できない構造になっているのです。
1. 社長に仕事が集まる本当の理由
多くの社長はこう考えています。
- 重要な判断は自分がやった方が早い
- 任せると事故が起きる
- 最後は責任を取るのは自分だから
この判断自体は合理的です。
問題は、その合理性が組織の構造を固定してしまう点にあります。
社長が判断した方が早い状態が続くと、社員は学習します。
「判断は社長の仕事だ」
すると現場では次の行動が定着します。
- 判断しない
- 例外を止める
- 社長に確認する
これは怠慢ではありません。
組織のルールに適応した結果です。
2. 「任せているつもり」が起こす逆効果
社長はよくこう言います。
「現場に任せている」
しかし現場側の認識は違います。
任されているのではなく、
責任だけ負わされていると感じています。
なぜなら、次の状態が起きているからです。
- 権限は与えられていない
- 判断基準は共有されていない
- 失敗時の防御もない
このとき社員は何を選択するか。
行動しません。
任せるとは、仕事を渡すことではありません。
判断権を渡すことです。
ここが抜けている限り、任せても仕事は戻ってきます。
3. ボトルネックは「人」ではなく「承認」
会社の処理能力は社員数では決まりません。
決まるのは、承認が通過する速度です。
もし、以下の業務がすべて社長承認ならどうなるでしょうか。
- 値引き
- 納期調整
- 契約条件
- クレーム判断
- 例外対応
その会社の処理能力は、社員10人でも50人でも同じになります。
社長一人分です。
つまり、
社長に仕事が集中している会社は、
人手不足ではなく「承認不足」の会社です。
社員を増やしても忙しさが解消しない理由がここにあります。
4. 社長が忙しい会社が成長しない理由
社長が現場判断を抱える状態では、次の問題が発生します。
①意思決定が遅くなる
顧客対応のスピードが落ち、機会損失が発生します。
②社員が育たない
判断経験が積めないため、管理職が生まれません。
③社長が戦略に時間を使えない
新規事業、採用、改善に着手できなくなります。
結果として会社は
「回っているが伸びない」状態に入ります。
これは能力の問題ではなく、構造の問題です。
5. 解決策は人材育成ではない
この問題を「教育」で解決しようとする企業が多くあります。
しかし、教育では解決しません。
理由は単純です。
判断する機会がないからです。
必要なのは次の三つです。
- 判断基準の明文化
- 権限の段階設定
- 例外処理のルール化
例えば、
- ○%以内の値引きは担当者判断
- 納期○日以内の調整は部署判断
- ○万円以上のみ社長承認
この設計を行うと、仕事の流れが変わります。
社員が動き始め、
社長の机に来る案件が急に減ります。
結論
社長に仕事が集中するのは、社員の能力不足ではありません。
組織に「判断の通り道」が設計されていないため、
すべての判断が最終地点である社長へ集まっているだけです。
社長が忙しい会社ほど、
実は社員が働いていないのではなく、
社員が判断できない会社です。
社長の仕事を減らす方法は、仕事を減らすことではありません。
判断できる人を増やすことです。
それは教育ではなく、
権限を設計することから始まります。
