中小企業では、専任のIT担当者を置いていない会社も少なくありません。
その結果、パソコンに詳しい社員、総務担当者、経営者自身が、日常業務の合間にIT対応をしているケースがあります。
パソコンが動かない。
メールが届かない。
クラウドサービスの設定が分からない。
Excelの管理が限界に近づいている。
新しいシステムを導入したいが、何を選べばよいのか分からない。
こうした問題が起きるたびに、誰かが本業を止めて対応する。
そこで考えたいのが、「IT担当者を採用する」以外の選択肢です。
私たちはこれを、**「IT担当者ゼロ経営」**と呼んでいます。
IT担当者ゼロ経営とは
IT担当者ゼロ経営とは、
専任のIT担当者を社内に置かなくても、ITに関する相談、運用、改善、トラブル対応が止まらない状態をつくる経営の考え方
です。
「ITを担当する人をなくす」という意味ではありません。
重要なのは、特定の社員だけにIT業務を集中させないことです。
必要な業務を、
- 仕組み化する
- クラウドサービスを活用する
- 自動化する
- 外部の専門家を活用する
- 困ったときに相談できる窓口を用意する
ことで、社内に専任担当者がいなくても回る状態を目指します。
中小企業で起こりやすい「なんとなくIT担当者」の問題
中小企業では、正式なIT担当者ではない社員がIT対応を任されていることがあります。
例えば、
「Excelに詳しいから」
「パソコンに強そうだから」
「若いから」
という理由だけで、社内のIT相談が一人に集まるケースです。
この状態にはいくつか問題があります。
本来の仕事が止まる
ITトラブルが起きるたびに、本来の業務を中断して対応することになります。
1回の対応は10分でも、それが毎日のように発生すれば大きな負担になります。
属人化する
設定方法、パスワード、契約情報、システムの使い方などを一人だけが把握している状態になると、その人が休んだだけでも業務が止まる可能性があります。
退職した場合には、さらに大きな問題になります。
IT投資の判断が難しくなる
日常的なパソコン対応と、
「どのクラウドサービスを導入するか」
「システムを作るべきか」
「AIをどこまで使うか」
といった経営判断では、必要な知識が異なります。
社内の「パソコンに詳しい人」に、すべてを任せるのは現実的ではありません。
IT担当者を採用すれば解決するのか
もちろん、会社の規模やIT利用状況によっては、専任のIT担当者を採用した方がよい場合もあります。
一方で、小規模な会社では、
IT担当者一人をフルタイムで雇うほどの仕事量はない
ということもあります。
日常の問い合わせは週に数件。
システム導入は年に数回。
大きなITトラブルはたまに発生する。
このような会社で専任担当者を一人採用すると、必要な業務量と人件費が合わない場合があります。
そこで、社内に人を一人置くのではなく、必要なIT機能を分解して考える方法があります。
IT担当者ゼロ経営を実現する5つの要素
1. 日常的なIT相談窓口をつくる
最初に必要なのは、社員が困ったときに相談できる場所です。
例えば、
- パソコンが動かない
- メール設定が分からない
- Wi-Fiにつながらない
- Microsoft 365やGoogle Workspaceの使い方が分からない
- Excelの操作で困った
といった日常的な問題です。
これらを経営者や特定の社員が抱え込まない状態をつくります。
2. 情報を個人ではなく会社に残す
IT担当者ゼロ経営では、属人化を減らすことが重要です。
例えば、
- 契約中のクラウドサービス
- 管理者アカウント
- ネットワーク構成
- PCや端末の情報
- システムの運用手順
- 問い合わせ先
などを整理しておきます。
「○○さんしか知らない」を減らすだけでも、会社のIT運用は安定します。
3. 繰り返し作業を仕組み化・自動化する
毎月同じExcelを作る。
同じ情報を複数のシステムに入力する。
メールで届いた内容を転記する。
こうした作業は、人を増やす前に仕組み化できる可能性があります。
クラウドサービス、AI、RPA、各種自動化ツールなどを利用することで、日常業務そのものを減らすことができます。
4. IT投資を第三者と判断する
IT業者から提案を受けても、
「このシステムは本当に必要なのか」
「価格は妥当なのか」
「もっと簡単な方法はないのか」
を社内だけで判断するのは難しい場合があります。
こうした場面では、システムを販売する会社とは別に、IT投資を一緒に判断できる立場があると有効です。
5. 専門領域だけ専門業者を使う
すべてのIT業務を一社に任せる必要もありません。
例えば、
- ネットワーク工事
- セキュリティ
- 業務システム開発
- Web制作
- 会計システム
- AI導入
などは、それぞれ得意な会社があります。
重要なのは、必要なときに適切な専門家へつなげられることです。
IT担当者ゼロ経営は「ITを外注する」という話ではない
単純なITアウトソーシングとは少し考え方が異なります。
すべてを外部へ丸投げするのではなく、
社内に残すもの、仕組み化するもの、外部に任せるものを整理する
ことが中心です。
例えば、
日常的な問い合わせは外部窓口へ。
定型作業は自動化。
経営判断は経営者と外部CIOが行う。
専門工事だけ専門業者へ。
という形です。
結果として、社内に専任IT担当者がいなくても、必要なIT機能を維持できる状態をつくります。
IT担当者ゼロ経営が向いている会社
特に相性がよいのは、次のような会社です。
- 従業員数が数名から数十名程度
- IT専任者を採用するほどではない
- 総務や経営者がIT対応を兼務している
- Excelや紙による管理が多い
- クラウドサービスが増えて管理できなくなっている
- システム業者の提案を判断できる人がいない
- AIやDXに興味はあるが、何から始めればよいか分からない
こうした会社では、新たにIT担当者を一人採用する前に、現在発生しているIT業務を整理する価値があります。
IT担当者ゼロ経営を始めるなら、まず何をするか
最初に行うべきことは、大規模なシステム導入ではありません。
まず、
「社内で誰が、どんなIT作業に時間を使っているか」
を洗い出します。
例えば、
| 現在の作業 | 担当者 | 頻度 | 対応方法 |
|---|---|---|---|
| PCトラブル対応 | 総務 | 週3回 | 外部相談 |
| Excel集計 | 営業事務 | 毎月 | 自動化検討 |
| アカウント発行 | 総務 | 入退社時 | 手順化 |
| システム選定 | 社長 | 随時 | 外部CIO相談 |
| ネットワーク障害 | 社長 | 不定期 | 専門業者 |
このように分解すると、
「社内にIT担当者が必要なのか」
ではなく、
「どのIT業務を、誰が、どの方法で担うべきか」
という議論に変わります。
目指すのは「ITに詳しい会社」ではなく「ITで止まらない会社」
中小企業が全員ITに詳しくなる必要はありません。
経営者がネットワーク設定を覚える必要もありません。
総務担当者がシステム開発を理解する必要もありません。
必要なのは、
困ったときに相談できる。
情報が整理されている。
繰り返し作業が仕組み化されている。
必要なときに専門家へつながる。
という状態です。
それが、私たちが考える「IT担当者ゼロ経営」です。
IT担当者を採用することそのものを目的にするのではなく、
ITが原因で本業が止まらない会社をつくる。
中小企業にとっては、その方が現実的な選択肢になるケースもあります。
よくある質問
IT担当者ゼロ経営とは何ですか?
専任のIT担当者を社内に置かなくても、IT相談、運用、改善、トラブル対応を継続できる状態をつくる経営の考え方です。
IT業務をすべて外注するという意味ですか?
いいえ。社内に残す業務、仕組み化する業務、外部へ任せる業務を整理し、最適な役割分担をつくる考え方です。
小規模企業でも導入できますか?
むしろ、専任IT担当者を採用するほどの業務量がない中小企業や小規模事業者と相性のよい考え方です。
IT担当者がすでにいる会社には関係ありませんか?
関係があります。特定担当者への属人化を減らし、問い合わせ対応や定型作業を外部化・自動化することで、IT担当者をより重要な業務へ集中させることもできます。
何から始めればよいですか?
まず、社内で発生しているIT関連業務を一覧化し、「社内対応」「仕組み化・自動化」「外部相談」「専門業者」の4つに分類するところから始めます。
株式会社ネクサステックブリッジでは、日常的なIT相談から業務の仕組み化、IT投資判断まで、中小企業のIT運用を支援しています。
「IT担当者を採用するほどではないが、今のままでは負担が大きい」という場合は、現在のIT業務を整理するところからご相談いただけます。
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