朝からチャットに確認が並び、見積書もクレーム対応も社長待ち。社長が働くほど会社は回る一方、社長が休むと止まる。これは社員の能力不足とは限りません。判断基準と権限が組織に置かれていない構造の問題です。

最初に、直近一週間で社長へ来た確認を集めます。そして一件ずつ、「本当に社長だけが決めるべきか」を分けます。

一つ目は、判断条件です。値引き、返品、納期変更などについて、金額、期間、顧客影響といった条件を言語化します。「ケースバイケース」を細かく見ると、過去の判断には共通点があることが少なくありません。

二つ目は、権限です。担当者が決められる範囲、上長へ上げる範囲、社長判断が必要な範囲を決めます。権限だけを渡すのではなく、迷ったときのエスカレーション先と期限もセットにします。

三つ目は、記録です。判断内容だけでなく、理由と結果を残します。結果が良かったか、想定外が起きたかを後から確認できれば、判断基準を改善できます。

ここで注意したいのは、最初から完璧なルールを作らないことです。一つの業務で二週間試し、現場が迷った箇所を修正します。例外を見つけることは失敗ではなく、仕組みを育てる材料です。

社長の仕事を減らす目的は、責任を放棄することではありません。日常の判断を現場へ移し、社長は方向性、投資、人材、重要顧客など、本来担うべき判断へ時間を使うことです。

承認を社長から現場へ移すための判断表

承認業務を委譲する際は「全部任せる」か「全部社長が見る」かの二択にしないことが重要です。次の表は権限設計の架空例です。金額・率・条件を含め、実際の基準は各社で決めてください。

判断の種類 現場で決める条件 上長・社長判断に上げる条件 残す記録
見積の値引き 事前承認済みの範囲内 採算を下回る・契約条件が変わる 変更前後の金額・理由
納期の調整 約束した期限と品質を維持できる 顧客合意や他案件への影響が必要 合意日時・納期・担当者
クレーム対応 定型回答・既定の補填範囲 法的請求・重大な信用問題が疑われる 事実・判断根拠・対応結果
例外的な契約 既定の契約条件に収まる 責任範囲・支払条件・情報管理が変わる 承認者・根拠文書

権限委譲が機能しているかの確認項目

  1. 社長への確認件数と待ち時間が減ったか。
  2. 担当者間で判断が一致しているか。
  3. 顧客への回答期限や品質が維持されているか。
  4. 例外が出たときの判断ログが残っているか。

ルールを増やして現場を縛るのではなく、業務の目的・完了条件を揃えたうえで、判断に必要な条件だけを残します。関連する整理方法は業務棚卸しの記事でも解説しています。

仕組化ラボでは、判断の属人化を可視化し、業務として再現できる形へ整理します。

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